集合住宅の1区画で角部屋のリノベーションの計画です。

お施主様からのご要望は、家事、生活動線が整っていること、大きな収納スペース、広いリビング、子供たちの顔が見える住宅とのことでした。

この住宅はキッチンが生活の中心に添えられています。
L型のLDKは2方向にベランダを持ち、一方は竹林、一方は晴れた日には富士山、という異なる屋外風景を楽しむことができます。
その中心にはキッチンが添えられていて、LDKを柔らかく分節しながらもキッチンからはどこに子供たちがいても目が届くようになっています。
また、キッチンの裏には洗面、洗濯、クローゼット兼物干し、ベランダまでが直線で並んでいて他の部屋を跨がずに家事を完結できるようになっています。

そして幅1100mmの動線空間とそれに沿うように着色した扉でつくる収納スペース+土間で構成されるホール空間は、ガラス框戸を介して2方向から光が柔らかく入り、キッチンからも目線が抜けて緩やかにつながることで、集合住宅にはあまり見られない印象的な明るいホール空間が立ち上がっています。

このホールは細かく区画された収納空間、玄関、廊下というものではなく、動線空間に沿うように収納を配すことで移動のついでに片付けができないか、各部屋にものを振り分ける必要性がなくなるのではないかと、家事のしやすさを総合的に考えた結果、各機能を1つの空間にまとめたことで印象的でおおらかな空間が出来上がりました。

そんな特徴を持ったホール空間はLDKから生活の場として伸びて行って、住宅の隅々まで楽しむことができるような空間装置になればと考えています。

それは、現地で顔合わせと視察の際に、お施主様の子供たちが暗い廊下を行ったり来たり、おもちゃを走らせたりする楽しそうな姿を見たときに、集合住宅でよく目にする暗くこじんまりとした各部屋をつなぐだけになっている廊下空間を、もっとおおらかな人の居場所になりながらも、お施主様のご要望に沿い、隅々まで楽しむことができる家にならないか。
そんな、設計者の願望と掛け合わせながら出来上がった象徴のような空間です。


竣工年:2023年

所在地:神奈川県横浜市

用途:住宅

設計:清水豪輝建築設計事務所(333architectsと協働)

施工:株式会社昭和未来

写真:清水豪輝建築設計事務所